講習会|アクリルと画面構成を体験してみよう|本城利彦講師

講習会|アクリルと画面構成を体験してみよう|本城利彦講師

講習会|アクリルと画面構成を体験してみよう|2024年8月25日(日)

 本城利彦講師の講習会を取材しました。日曜画家協会のスケッチ会で、本城さんはアクリルで構図、色、形が個性的な素敵な絵をいつも描かれています。どのようにして描くのですか?とみなさんからもよく質問されるそうです。本城さんみたいなアクリル画を描いてみたい、教えてほしいと、アクリル画の講習会をしていただくことになりました。

 まずは、画面構成が大事、ということで、いろいろ画面構成のポイントなどを教えていただきました。画面構成を平面化して考える、それによっていろいろな制約がなくなり、いろんな色、形に置き換えて自由に描けるようになる。えっ!!そんな楽しそうなことちっとも知りませんでした。いやいや、本城講師がスケッチ会のアドバイザーをされている時に何度か教えて頂いたことがあるのですが、良くわからなかったんです。でも、今回の講習会で少しわかった気がします。とっても嬉しいです!本城利彦講師、本当にありがとうございました。講習会に参加できなかった皆さまにも今回教えて頂いたことをお伝えしたくページを作成しました。ぜひご覧ください(写生会部:MasudaYuri)

お知らせ 今回講師をしてくださった本城利彦さんが「第37回 日本の自然を描く展|西日本展|2024年9月26日(木)~9月29日(日)」に出品されています。ぜひお越しください。

1 画面構成

【本城利彦講師】:どのような画面構成にするのか、スケッチに行く現場に下見に行ったり、ホームページに掲載された「スケッチポイント」の写真を見たりして、描く前に画面構成をいろいろ検討します。そして用紙に下地を塗っていくなど、できるだけ下準備をしてスケッチ会に参加します。

画面構成の考え方

  • 画面を分割して描く
  • 余計な物は描かない
  • 実際の風景にはいろんなモノがあり色がいっぱいあるが全部描くと収集がつかなくなる
  • 実際に存在しない面白いモチーフを入れる
  • 奥行をとらずに平面的に描く、正面から物を見るようにする(例えば建物を斜めから側面が見えるように描くと正面の色と側面の色を変えないといけなくなり、色の選択も難しくなる)
  • 平面で描く場合は、物を重ねて描く、明度の対比、彩度の対比、絵具や下地材で厚みを出す、などで空間、前後を演出することができる

実際にどのように画面構成を考えて描いているのか、いくつかの作品で説明します

画面構成:作品1|桃ケ池公園の蓮の池(大阪市阿倍野区)

画面構成の手順とポイント

  • 空を大きく入れると画面構成が難しくなるのでできるだけ空の分量を小さくする
  • 松林と民家は四角が横に並ぶ構成になる
  • 民家は木におきかえる
  • 四角の対になるモノとして丸が欲しいので丸い木を左端上に入れ、右端の民家を木に置き換えた部分を斜めに配置する
  • 空の色を青ではなく、蓮の黄色の補色の紫にする
  • 左下のスタートから水面の濃い部分の色を利用しながら、視線をジグザグに画面奥に運ぶ動きを作る

画面構成:作品2|帝塚山(住吉帝塚山郵便局とチンチン電車)

画面構成の手順とポイント

  • 古い郵便局を描きたかった。大きな建物を描くときは画面にどのような比率で配置するかが凄く大切、よく考えて決める
  • 建物はオレンジで道路は黄色にする
  • 電車は建物の補色のグリーンの色にする
  • 更に奥行を出したいので左手前に建物を入れる(重なりの効果)
  • 同系色が多く全体に眠たい感じになったので、黄色(道路の色)の補色、強めの紫の色を空の色にする
  • 建物の輪郭線をオレンジ色の補色のグリーンで入れ色の統一を図った。面白い効果が出たので今後も試したい

画面構成:作品3|笹部の棚田

画面構成の手順とポイント

  • 笹部の棚田は見た瞬間に、構図:A(手前に広がる棚田)、B(集落と森林)、C(空)の比率 が決まった
  • 画面左下から右斜め上へ、左斜め上へとジグザグに目線を導いていく画面構成を考える
  • 下地に薄いピンクを塗ったのが効いて寒色の中に少し温かみが出た

画面構成:作品4|玉串川の桜(八尾)

画面構成の手順とポイント

  • 俯かんで見ると平面的に処理しやすい
  • 抽象性を探ってみるが桜とか梅は分割が難しいです
  • 縦長で構図を考えていたがを横にしてみる
  • 曲線と直線の対比
  • ピンクとグリーンの対比
  • 画面右下からA(桜に沿って左に向かい上に抜ける),B(まっすぐ画面下の橋から画面上の橋へ)の二つの流れで画面に動きをだす
  • ピンクとシルバーは色の相性が良い
  • もう少し桜を柔らかく、地面を硬い感じにして対比してみたかった
参加者からの質問

【質問】橋の立体的でない描き方、実際の橋の色ではないのに、絵に違和感がないのはなぜですか?

【本城利彦講師】:平面的に描いているからです。3次元で橋などを立体的に描くと陰などその通りの色を塗らないと絵がおかしくなりますが、平面的に橋を描くとどんな色をつけても違和感がでません。また、実際に見える景色ではなく、目の高さを上げて上から見下ろした構図で描くのもひとつの方法です。

画面構成:作品5|大仏池(奈良・東大寺)

画面構成の手順とポイント

  • Sサイズを使った。一番安定性があるが動きがなくなる
  • 大池、木立、空の比率を十分検討する
  • Sサイズは動きのない画面になるので、池のライン、木立のラインをカーブさせてみる
  • 大池のカーブさせたラインをゆがめてさらに動きを出す
  • 大池のカーブに対応させて木立のラインをゆがめる
  • 木の幹の角度もよく考えて描きます。池の右端の幹を目立つようにして左側に傾け、それに対するように隣の木を右側に少し傾けています。このような細かい配慮をして描いています
  • 画面左下に大池に映りこんだ雲を描き、目線と動きの始まりを作る
  • キャンバスのサイズが違うと同じモチーフでも違って見えます。いろんなサイズのキャンバスで描くと普段と違った絵ができると思いますので、ぜひ試してみてください。
  • 描きたいモチーフにあわせて紙のサイズを選ぶ

キャンバスのサイズ

いろんなサイズのキャンバスで絵を描いてみると普段と違った絵が描けると思います。ぜひ試してみてください。

・S=Square  一番安定性が感じられる比率
・F=Figure 【人物】を描くのに最適な比率
・P=Paysage【風景】を描くのに最適な比率
・M=Marine 【海景】を描くのに最適な比率

2 アクリル画を描いてみよう

アクリル画の注意事項

良くも悪くも速乾性

  1. 使った筆はすぐ洗う
  2. パレット上には 今、使用する絵具のみ出す(水彩のように全色出すと固まってしまう)

アクリル画を描く手順

全体に色を5回ぐらい重ねて塗ります
個有色を最初から塗らないこと

  1. 画面全体に2~3色で薄く塗る(例えば 明るいところは黄色、陰の部分はブルーなど)
  2. ドライブラシで他の色をランダムに塗る
  3. 出っ張ったところ、目立たせたいところにホワイトを厚めに塗る
  4. 黒を全体におつゆ描き(アクリル絵の具を水で薄く溶いてサラサラな状態で画面全体にランダムに塗る(平筆の片方だけに絵具を多めにつけて所々濃くしたり、または布で拭き取ったりして、変化をつける)。用紙を立てて塗った絵具を流してもオモシロイ効果がでます
  5. 陰の部分、ハイライト部分を強調する
  6. 個有色を塗って行く(下地の色を所々残す)
  7. ナイフなどを使って強調したい所の色を削りとったりして強める

準備

絵具がすぐ乾いてしまいますので、紙パレットを使います。紙パレットは台紙にセロテープなどで貼って使うと使いやすいです。小さな紙は試し塗り用に用意しました。

下描きする|画面に動きを出すには?

下描きは(写生会部:Masuda)が、鉛筆でラフに描きました。本城利彦講師から人を入れたほうが良いとアドバイスを頂いたので人を描きました。下描きでは絵にどうやって動きを出すのかわかりませんでした。それで本城利彦講師に絵に動きを出すにはどうしたら良いか質問しました。道のラインを右上に上げる、窓枠を右斜めにする、扉の上を右上がりにする、上部のバルコニーのラインを左下にする、など赤の矢印の箇所のラインを修正していただきました。わあ、絵に動きが出ましたよ!

画面全体に2~3色で薄く塗る

本城利彦講師:下描きしたら画面全体に、水で薄く溶いたアクリル絵の具を大きくラフに塗ります。ラフに塗るときは先の割れた筆などあれば使いましょう(傷んだ筆があったら捨てずにアクリル画を描く際にぜひ使ってください)。今回は青と補色の黄色を塗りました。ラフに塗るときは筆先がそろってないほうがオモシロイ効果が期待できます。陰にしたいところは青で、明るいところは黄色で、なんとなくで良いので明暗を意識して全体のバランスをみながらラフに塗りましょう。塗り残しがあっても構いません。一旦乾かします。

ドライブラシでさらに色を重ねていきます

本城利彦講師:面白い効果を出すために、後でちらっと見えたらアクセントになるような色、今回は赤や茶色を濃い目にしてドライブラシで画面を少しよごすような感じで塗ります。次に、出っ張ったところ、目立たせたいところにホワイトを厚めに塗ります(赤マル印の部分)。きっちり塗らず、ところどころ絵具を盛ったり、線を途切れさせたり、はみ出させたりしながら塗ります。

黒で全体におつゆ描き、そのあと所々縁取りして絵の形を整える

本城利彦講師:黒を全体におつゆ描きします。アクリル絵の具の黒をおわん型の容器に水で薄く薄く溶いてサラサラな状態で画面全体にランダムに塗ります。おつゆ描きに使用している筆はファン筆といいます。このときファン筆の片方だけに絵具を多めにつけて所々黒の色を濃くしたり、または布で拭き取ったりして、黒色の濃淡に変化をつけましょう。用紙を立てて塗った絵具を流してもオモシロイ効果がでます。

本城利彦講師:出っ張ったところ、目立たせたいところに塗ったホワイトの上など、黒い色がないほうが良いところはティッシュで拭き取ります。乾いてから濃度を濃くした色(今回はパープルにブルーをまぜました)で扉のアーチ、窓枠などの輪郭を、所々縁取りして、全体の絵の形を整えていきます。これもきっちり描かない、きっちり塗らないことがポイントです。縁取りは(写生会部:Masuda)がしました。

陰の部分、ハイライト部分を強調する

本城利彦講師:陰の暗い色を入れることで、ハイライト部分(ホワイト)がさらに際立ちます。今回は画面上のバルコニーと中央の扉を暗い色で塗ります。

個有色を塗って行く(下地の色を所々残す)

本城利彦講師:個有色を塗ります。下地の色を残しながらラフに塗るのがポイントです。

ナイフなどを使って強調したい所の色を削りとったりして強める

本城利彦講師:強調したい所をデザインカッターで削りとります。削りとったラインに強弱をつけながら(太い、細い、かすれ気味、削れてないなど)用紙の白い色を出すのがポイントです。扉の中央のラインも削りとりました。

仕上げと完成

仕上げは(写生会部:Masuda)がしました。いろいろ試行錯誤しながら(視線を動かす工夫をすっかり忘れ去ってしまいましたが)完成です。

参考 講習会に参加された方の絵は「講習会|アクリルと画面構成を体験してみよう」ページでご覧いただけます。ぜひご覧ください。

3 本城利彦講師のアクリル画 作品集

アクリル画と画面構成の参考に、絵をご提供いただきました。教えていただいた画面構成を思い出しながら絵をご覧ください。画面構成に、いろいろ気づくことがありそうです。ブルーの花瓶は、緩衝材のプチプチに絵具を塗ったものを用紙に写して描かれたそうです。

4 画面構成の参考本

本城講師が講習会の参考にと持ってきてくださった本です。とても参考になる本だそうです。目次を見るだけでも画面構成の参考になりそうでしたので目次を掲載してます。興味のある方はネットで古書やAmazon、メルカリなどで販売されていることがありますので探してみてください。

技法シリーズ 画面構成の技法|佐藤泰生/酒井信義/室越健美

第一章|画面構成の考え方と基礎知識
画面構成とは
構成・コンポジション・構図
画面のバランス
|対角線の意識
|従来の構図に学ぶ知恵
明暗を利用したコンポジション
遠近法利用のコンポジション
色彩のポイント
色の同時効果
|いくつかのパターン
|絵画実践的色彩構成のトレーニング
個性を生かした色彩の使い方|分類された4つのタイプ
1|色をモノクロのトーンで構成するタイプ
2|客観的な色彩で構成するタイプ
3|固有色と主観色で構成するタイプ
4|主観色によって構成するタイプ
平面化|意識のめばえ
平面化の方法
キュービズムの構成原理
キュービズムの実践
コラム|マチエール考
第二章|計算された画面づくりのために
絵画における場とは
四角形の場/楕円の場/菱形の場/市松模様の場/台形の場
帯の場/いなずま形の場/線・グラフの場/線・オールオーバーの場
カーテンの場/気球の場/背景の場/色の場/マチエールの場
場を組み合わせる|テーマによる場の実践
コンポジションと構成の実際|静物画による展開
1|古典的な方法
2|セザンヌ的な方法
3|セザンヌ以降の方法
4|キュービズム的方法
5|図像学的解釈による方法
コラム|次元を変える方法
第三章|名画分析と制作の実践
よい色・形・マチエールとは|セザンヌ以降の14人の作家
マチス/ヴュイヤール/ボナール/モジリアーニ/バルテュス/コーラップ
アンテス/ヴンダーリッヒ/ベーコン/デ・クーニング/リバース
ホックニー/ゴーキー/モランディ
構成と制作の実践|研究と表現8例
コラム|ピカソの影響と個性

【参考図書】 三岸節子展●図録●花スペイン風景アンダルシアアルカディアヴェロン女流洋画壇●1989年●朝日新聞社

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